2005年 05月 24日
『豊饒の海』全四巻ようやく読み終えました。。
長くて険しい道のりでした。ラスト近くになるにつれ、自分が本多に同化しているのがわかりました。。決して人生の主人公になりえず、傍観者として人生を終えようとしている本多に。。 結局私は本多や透と同じ側の人間だと言うことが、嫌と言うほど思い知らされたような気がします。 「暁の寺」・・・これはシリーズ4巻の中で私にとってもっとも難解な1冊でした。唯識と阿頼耶識。私にとっては、どんなにあがいてもたどり着けない領域に感じられました。(ーー;) けれども、本多がインド(主にベナレス)で見たもののイメージは、私にとっても脳裏に焼きついてしまいました。何人かの友人がインドへ旅をし、人生観が変わった。と言っていたのは、きっと本多がベナレスで受けた衝撃の様なものと同じ事なのかなぁと思ったりしました。(私もインドに行った事がありますが、ベナレスには行っていないし、完全な観光旅行だったのでそこまでの衝撃は感じませんでした。。) ストーリー的には1,2巻に比べて面白みが少ないな。と思いました。まぁ、難しすぎるっていうのが一番でしょうが、転生者のジン・ジャンに清顕や勲の様な魅力が感じられなかったのも理由の一つかな? それにやはり傍観者の本多が主人公では盛り上がりに欠けるのか? 本多の性癖や、慶子の秘密にしても、現代ではそれほど衝撃的ではないのが残念だったかも。きっと、出版当時に読んでいたら頭がクラクラしそうな二人の秘密ですけどね。 「天人五衰」・・・これは面白かったです。このラストを読むため、聡子に再び逢うために、私もこの長い道のりを歩いてきたのです。。 最初、「やけに読みやすくないか~?」と感じながら読み進んでふと気がついたこと。「天人五衰」だけ、古本で手に入らず文庫の新刊を買ったんですが、字が大きくなっててすごく読みやすくなってました。(笑) 本多が見つけた4人目の転生者(であるはず)の透に、私は惹きつけられてしまった。。どんなに内側に悪が潜んでいたとしても。。この凄まじいまでの自意識の高さ。そして後半の透のプライドをかけたかのような自殺未遂。このくだりには痺れました~。 そして、ラスト。とにかく呆然。 そうくるかー!?と真っ白になりました。 この三島由紀夫の読者の裏切り方は最高でした! 突然投げ出され、宇宙の塵になって漂うような虚無感。 けれども、決して救われないわけではなくて、‘無’こそが救いなのかとも。。 永遠の謎です。。。
by canal-city
| 2005-05-24 22:11
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